シンポジウム1

テーマ

美味しい地域の作り方

座長

髙橋潤・佐藤 裕邦

本メインシンポジウムのテーマは「おいしい地域の作り方」としています。

「地域包括ケア」や「多職種連携」という言葉がマスコミなどでは飛び交いますが、 これは医療や福祉などの分野だけで将来の地域の姿を模索している感じがあります。 「地域包括ケア」や「多職種連携」は、医療・福祉に直接関わらない業種も含め地域 全体で考え、この先にある社会の有り様に繋がるモノだとと思います。従って、この 地域の将来の姿を表現していくには地域にあるすべての力を連携させることが必要で あると考えます。

本シンポジウムは「地域の人たちが、この地域で生きていて良かった」と思える地 域づくりを「食」を中心に据えて考えたいと思います。

本シンポジウムでは、食べることを視点に住みよい地域づくりを頑張っている方が どんな活動をしているか?どんな思いを持っているか?などをお話しいただき、お互 いの活動状況を知った上で、今後それらをより盛り上げていくときに、自分たちに何 が出来るか?何をしたら良いか?などを参加者と共にディスカッションを深めたいと 考えています。

シンポジスト1 瀬尾 利加子

演題名

その課題、多業種の協力が必要?
〜鶴岡食材を使った嚥下食を考える研修会の場合〜

所属

  • 鶴岡食材を使った嚥下食を考える研修会 代表
  • 株式会社瀬尾医療連携事務所 代表取締役

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プロフィール

2017 年 9 月 (株)瀬尾医療連携事務所設立 代表取締役

2018 年 2 月~鶴岡市総合計画審議会企画専門委員会委員

2018 年 5 月~鶴岡食材を使った嚥下食を考える研究会代表

2019 年 3 月 健康のまちづくりプロバイダー取得(健康のまちづくりアカデミーin 福井県高浜町)

2019 年~ 鶴岡市の地域医療を考える市民委員会委員長

2019 年~ NPO 在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク理事

2021 年 9 月 NPO 法人 地域共生を支える医療・介護・市民全国ネットワーク常任理事

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抄録

高齢社会で起きる医療介護分野が抱える課題解決には多業種の協力が必要と考えている人 は多いだろう。外食と嚥下食の課題も、飲食店・料理人の協力が必要である。 しかし飲食店はビジネスであり、嚥下調整食を作る手間、コスト、ニーズそして、嚥下障害 に関する知識不足による不安など、参入にはハードルが高く、協力者を見つけることは難し い。

山形県鶴岡市では、鶴岡食材を使った嚥下食を考える研修会(2019 年設立)がある。立上 げのきっかけは、南庄内食と栄養を考える会(2010 年開始)で一緒に活動していた小川管 理栄養士の「地元の旬の食材を使った嚥下食を提供してくれるお店が欲しい」という思いで あった。

今回は、料理人や企業を巻き込む際の課題と私が使った作戦を紹介する。

シンポジスト2 延味 克士

演題名

お腹も心も満たされるハレの日の日本料理

所属

  • 山形県市町村職員共済組合 湯野浜温泉うしお荘  支配人兼料理長
  • 庄内日本料理向上研究会 副会長
  • 山形県日本調理技能士会 常務理事

抄録

旅館、飲食店の調理の現場では、長く続いているグルメブームの影響もあり味の良さはもちろんのこと、見た目の美しさや器選び、食材選びに至る背景まで、ひと昔前に比べ高いレベルのものを常に求められている。 さらに慢性的な人手不足のこの業界において、何故手間のかかる嚥下調整食に取り組もうと思ったのか。 嚥下障害のあった亡くなった父の存在と、鶴岡食材を使った嚥下食を考える会の瀬尾さんとの出会いによってこの取り組みは始まった。 試作を重ね、医療、介護、栄養士 それぞれの専門家と連携し、食感や舌触り固さなど問題点を見つけどう調理すれば改善に繋がるのかを考え試作を繰り返し3年がかりで実際に提供可能な日本料理を完成させた。想いを持ち続け、全力で行動するとそれは形となる。 今後の課題として、さらに多くの料理人に取り組んで貰うために行政や調理師団体、メディア等を巻き込んで活動を続ける。

シンポジスト3 佐藤 栄司

演題名

【お菓子で健康⾧寿】酒田米菓、健康領域への挑戦

所属

酒田米菓株式会社 代表取締役社⾧

プロフィール

1963 年、酒田市生まれ。親族が経営する札幌の米屋に勤務したのち、1988 年に 27 歳で庄内に戻ってくる。団子屋「さと吉」、団子製造会社「AC コーポレーション」を起業したのち、2014 年から酒田米菓の社⾧に就任。「オランダせんべい FACTORY」のオープンや、問屋を通した大手スーパーなどへの販売という流通からの転換を図り、多品種 小ロットの商品を、小売店や消費者に直接届ける仕組みを模索している

抄録

【背景】厚生労働省の 2019 年「人口動態調査」のデータでは、誤嚥性肺炎の死亡数は第 6 位を占めております。誤嚥性肺炎とは、噛む力、舌を動かす筋力、食べ物を飲み込む嚥下の機能が低下することで起こりやすくなり、口腔内の筋力と咀嚼力を適切に維持することが予防につながります。

【商品】酒田米菓は自らの咀嚼機能を判定できる「パタカせんべい」を、歯科医師・博士(歯学)の五島朋幸氏と共同開発しました。1 枚を口に入れ 30 回以内に飲み込める程度に咀嚼できれば正常な咀嚼力であることを確認できます。市販のソフトせんべいよりも塩味を抑え、油不使用で仕上げました。

【その他健康領域の取組み】酒田米菓ではパタカせんべいの他にも噛む×健康をコンセプトにしたブランド<Comefit(カムフィット)>を展開しています。お米で作ったグラノーラやスポーツの補食に最適な煎餅などで噛む習慣作りを行い、年齢を重ねてもしっかり食べ物を美味しく味わえるような健康な身体でいて欲しいと考えています

シンポジスト4 浅野 佳織

演題名

みんな一緒 心と体を健やかに笑顔のごはんを

所属

keiki li'ili'i 株式会社代表

プロフィール

16 歳、9 歳、7 歳、4 歳、1 歳の児の母離乳食

【太陽と月のひかり】プロデュース

離乳食・幼児食コーディネーターアレルギーアドバイザー

離乳食アドバイザー

抄録

世の中の食べ物には驚くほど卵と乳が使われている。離乳食の時から息子のごはんは市販の食材はほとんど与えることができなかった。4 歳になる息子は重度の食物アレルギーである。彼は兄弟と同じものはほとんど食べられない。卵、乳、バナナ、キウイ、魚卵、たくさんのアレルギーを抱え生後 10 ヶ月で初めてアナフィラキシーを経験。 オムレツにハンバーグ、クッキーにケーキ、その味を彼は知らない。外食した時に食べられるものが白米しかなく店を後にすることも度々あった。安心してこの子に食べさせられるごはんはないだろうか。想いのかけらが【太陽と月のひかり】を立ち上げる大きな原動力となる。アレルギー児が右肩上がりで増える現代、同じ思いをしている母親がたくさんいるんじゃないだろうか。子育てをしながらアレルギーの事も考え、小さな世界の中で苦しんでいる家族がいるのではないか。私の作るごはんで救われる人がいるのではないだろうか。農業大国の山形、四季折々旬の食材が揃い、秋には自慢のつや姫が金色に光り輝く。この土地に生まれたからこそこの自然の恵みを最大限に生かし誰でも安心して食べられる離乳食をつくりたい。そしてすべての家族が笑顔で食卓を囲めるように、私の小さな一歩が誰かの喜びになることを願いながら離乳食を作っている。